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    クラシックバレエ/ラ・バヤデール

    古代インドを舞台とした、寺院の舞姫 バヤデールと戦士の悲恋物語。 身分違いの三角関係の息詰まる展開や壮麗な藩王(マハラジャ)文化、そしてクラシックバレエの精華のような「影の王国」の場面の群舞の美と、みどころの多い名作。二十世紀後半以降、世界中で人気が高まった。

     

    第一幕 第一場 寺院の前庭に、狩から戻った戦士たちが集まってくる。そのなかのひとりソロルは勇士としてその名をとどろかせているが、神に仕えるバヤデールのひとりであるニキヤとひそかに愛しあっている。いっぽうで大僧正も、聖職者の身でありながら、ニキヤに激しい愛情を抱いている。

     

    第二場 藩王の宮殿。彼は一人娘ガムザッティの婿にソロルを迎えよぅと、二人を引き合わせるが、大僧正が訪れて人払いを願い、ソロルがニキヤと愛し合っていると耳打ちする。密談を盗み聞きしたガムザッティはニキヤを呼びつけるが激しく対立。父娘ともども、彼女を亡き者にしようと憎悪の炎を燃やす。

     

    第二幕ガムザッティとソロルの婚約式。贅を尽くした宴がたけなわとなったところへ、二 キヤが姿を現す。お祝いの踊りを捧げながらも、その心は悲しみで張り裂けんばかり。ソロルからと花籠が手渡されるが、中には毒蛇が仕込んであり、胸を噛まれた彼女は倒れてしまう。大僧正は自分のものになるならと解毒剤を差し出すが、ニキヤはそれを拒んで息絶える。

     

    第三幕 第一場 「影の王国」。ソロルはわが身を引き裂くような罪悪感と悲しみから逃れるため、アヘンを吸って深い眠りに落ちる。するとその夢には、死んだバヤデールたちの幻影霊魂が現れて乱舞するのだった。ソロルはニキヤの幻影に赦しを乞う。

     

    第二場ガムザッティとソロルの結婚式。ソロルの重い心をよそに式は進むが、そこに彼にしか見えないニキヤの亡霊が現れ、 彼を誘う。突然、大音響とともに寺院は瓦解し、人々は息絶える。ニキヤとソロルは、はるかヒマラヤの山なみを越えた永遠の世界に、手をとって昇ってゆく。

     

    作品が初演されたのは1877年だから、その後次々と古典バレエの傑作を生み出していくブティパの、初期の作品にあたる。現世から超自然の世界へとまたがる悲恋や異国趣味には、確かに、十九世紀前半からパリを中心に時代を席巻したロマン主義の残り香 が色濃く漂う。いっぽうでは、ほとんど数学的なまでに均整の取れた女性群舞の扱いによって、 たんなる感傷を超えた崇高で透明な詩情に到達するプティパの典型的な白の場面すなわち「影の王国」の美しさは、すでに完成されており、彼の全作品を通しての白眉といえる。ロシアでは二十世紀に入って 時代の好みも加味した全幕の改訂が進み、場面が整理されて元の五幕から現在の三幕構成に収束するとともに、さまざまな踊りの追加が行われた。ポノマリヨフ チヤブキアーニによる、ソロルのヴァリエ—シヨンやブロンズアイドルの踊りなどは、その魅力的な例である。

     

    ロシア国外への紹介は比較的遅く、キーロフ・バレエの国外公演によって、1961年にパリ、ロンドン、ニューヨークで「影の王国」が紹介された際に大きな評判をとった。それにつづく西側での上演の先鞭をつけたのが、まさにそのパリ公演の際にキーロフから亡命したヌレエフの演出による、ロイヤルバレエでの上演。

    本人とフォンテインが初日を飾った。その後、同じくキーロフ出身のマカロワがまず「影の王国」をついで全幕版を手がけ、アメリカン バレエシアターで初演しこの作品の人気の火付け役となった。ヌレエフは晩年にはパリオペラ座で絢爛たる全幕版を完成、これが彼の遺作となった。

     

    ロシアでは、ボリショイでは半世紀近く上演が途絶えていたのを、グリゴローヴィチが復 刻。マカロワと同じく、プテイパ版に含まれていた、最後の「寺院の瓦解」の場面を復活させた。 作品誕生の場でもあるマリインスキー劇場では、ほかのプティパ作品の蘇演にも力を注いでき たヴイハレフにより、舞踊譜にもとづいて復刻。また新国立劇場バレエ団は牧阿佐美版を上演している。

     

    踊りに磨き抜かれた美しさがあり、いっぼぅで迫真の演技に引き込まれる。その両方が揃っているところが『ラ・バヤデ—ル』の魅力だが、踊りではまず  婚約式のグランパガムザッティの技巧は、彼女の地位と気位、華やかさにそのままつながる。それに続くニキヤのソロは、濃密な悲哀の吐露と高度な身体コントロ—ルが体となった、きわめて求心力の強い場面である。影の王国では、コ— ルドバレエの美。もちろん主役二人のパ・ド・ドゥ、そして三人のバヤデ—ルのヴァリエ—シヨンも、精緻なポワント技やパランス、回転の妙技を際立たせて見ごたえがある。

     

    演技の番のみどころは、ソロルをめぐって二人の美女が火花を 散らす第一幕最後の場面だろう。 激しい情念とエゴ、お互いに心に抱く複雑な侮蔑と恐れの露呈など  感情と力関係のめまぐるしい変化が、息もつかせない。