クラシックバレエ/海賊
オリエンタルなムードときらびやかな舞勇壮な海の男たちの華麗なアドヴェンチャー
嵐で難破した海賊たちが、ギリシャの娘に助けられる。海賊の首領コン ラッドと娘のひとりメドーラは 心引かれ合う。しかし、メドーラたちはトルコの兵士に誘拐され、奴隸市場に売りに出されるセイドパシャがメドーラを落札するが コンラッドが 彼女を救い出す。コンラッドはメドーラと彼女の友人たちと奴 隸商人ランケデムを、海賊の隠れ家である洞窟に連れてゆく。 メドーラの願いでコンラッドが彼女の友人たちを故郷に帰すと聞き、部下ビルバントらがコンラッドに反発する。部下の悪巧みによりコンラッドは薬草で眠らされ、メドーラは奴隸商人にパシャのハーレムに連れ去られる。コンラッドが目覚め、海賊たちはメドーラを救いにパ シャの館に向かう。変装して潜入した海賊たちは、メドーラや友人を救出する。メドーラによってビルバントの裏切りが暴かれる。仲間の海賊とメドーラ を乗せて、海賊船が再び出帆する。バレエ『海賊』は、ロマン主義バレエの後期1856年に、ロマン派の詩人バイロンの同名の物語詩を題材に、ジョゼフマジリエの振付演出によりパリオペラ座で初演された。だが現在上演されている『海賊』のオリジナルは、十九世紀後半にロシアで何度も改訂を行ったマリウスプティパの版である。プティパの最終版は1899年の演出であり、『海賊』の原典版は、このときに出来上がったとされている。ただし、ガラコンサートで、しばしば踊られるメドーラと海賊の奴隸アリの有名なグラン・パ・ド ・ドウは、1930年代ごろに、ワフタングチヤプキアーニ、アレクサンドルチェクルイギンらが、ドリゴの音楽を使って振付けた挿入部分である。全幕の上演は、ロシア、アメリカ以外ではあまり行われていないが、このグラン・パ・ド・ドウは、世界中で愛されている。
まずガラでおなじみのメド—ラ と奴隸アリのグラン・パ・ド・ドゥ 全幕の際は海賊の首領コンラッドが加わるパトロワ。特に、男性のセクシーさが強調されるアリの踊りが、観客を魅了する。 高い跳躍や複雑な回転技などの 鮮烈な印象を与えるテクニックの 連続で、それが豹のような柔らかい弾力のある動きで行われることが多い。衣裳も、男性の筋肉の 美しさをアビールする露出度の大きいものである。もちろん、メドーラもグランフッテなどの高度なテクニックを披露し、祝祭的気 分を盛り上げる。ほかに、もうひとつのグラン・パ・ド・ドゥである奴隸商人とメド—ラの友人ギュリナ—ラのバ・ド・エスクラヴも、 高々と女性を持ち上げるサポー卜やエネルギッシュな跳躍が見ごたえがある。また、第三幕の「生ける花園」の女性群舞の芳香漂うような優美なクラシック舞踊も、プテイパ作品ならではの魅力。