クラシックバレエ/ライモンダ
美女ライモンダをめぐって東西の騎士が闘うエキゾテイックな魅力に満ちたグランドロマン
舞台は中世フランスのプロヴ ンス地方。ドリス伯爵夫人の姪ライモンダの婚約者ジャン ド・ブリエンヌが、ハンガリー王に付き従って十字軍の遠征に出かける。ライモンダは、婚約者の帰還を伯爵夫 人の城で待っている。その間に、 サラセンの騎士アブデラフマンの一団が、やって来る。騎士は 彼女に求婚するが、拒絶され、強引に誘拐しようとする。そこ に、帰還したジャン・ド・ブリエンヌが現れる。ハンガリー王は、ジャン・ド・ブリエンヌと騎士を決闘させる。ジャン・ド・ブリエ・ンヌが勝利し婚約者たちは結婚する。数々の古典名作バレエを生み出したマリウス・プティパの最後の大作である『ライモンダ』は1898年に、ペテルプルグの帝室マリインスキー劇場で初演された。十九世紀後半にチャィコフスキーがバレエ音楽に取り組むまで、十九世紀のバレエ音楽は、 あくまで踊りの動きをサポートするもので、振村をリードすべきではないと考えられていた。 パレエ音楽の作曲家は、ロシアグでは「職人作曲家」と呼ばれ、振付家の要求通りに踊りやすい音楽を作る器用な作曲家たちだった。『ライモンダ』は、チヤイコフスキーがバレエ音楽の芸術性を高めた直後に、彼に続いて帝室劇場のバレエ音楽を依頼されたグラズノフの作曲である。若き作曲家は、祖父のような 年齢のプティパと熱心に創作を 進め、きらめくように美しい作品が出来上がった。チャィコフスキーの音楽の人間的な熱い感情よりも、より簡潔で音楽自体振付自体の美しさが際立つこの作品は、老プティパの理想のバレエに近かったように思われる。また、辰族音楽、民族舞踊に興味をいだいていたこの二人の共同制作により、これらの要素が見事に洗練、昇華されてクラシックに融合された。
作品の大きな特長は、民族舞 踊 音楽とクラシック舞踊 音楽の巧みな融合である。その究極の形が、第三幕の結婚式でのライモンダとジャン・ド・プリエンヌのグラン・パ・ド・ドゥ。情熱的な民族舞踊から、その表現豊かなポーズやステップを引用しつつ、情熱的地上的なニュアンスを取り除いて、至咼なクラシック舞踊の美しさに昇華させている。ハンガリ—の民族舞踊チャルダッシュの憂愁や誇り高いポーズが、崇高なクラシック舞踊に独自性を与えている。このグラン・バ・ド・ドゥは、作品の中の最大の見せ場であり、ジャン・ド・ブリエンヌの高貴で雄々しい跳躍、ライモンダの滑らかなポアント・ワークも見もの。ほかに、幻想的なクラシック舞踊の群舞シーン「ライモンダの夢 婚約者を待つライモンダの高度な ソロ、サラセンの騎士の一団のス ベイン舞踊やサラセン人の踊りの色彩豊かさも大きな魅力である。