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    バレエ/ロミオとジュリエット

    世界一有名な恋人たちが織りなす 甘く切なく美しい、悲劇のドラマ

    シェィクスピアの戯曲を原作とする、ドラマティックな悲劇的バレエ。

    若く みずみずしい悲恋には永遠の魅力があり、振付家たちはこぞって自身の演出を手がけ、名のあ るダンサーたちの誰もが踊りたがる。ゆうに五十を超える演出を数え、十九世紀的な妖精物語からリアルな人間のドラマへ とバレエの素材が変化した二十世紀の、象徴的な名作であり、 大ヒット作でもある。

    第一幕第一場 舞台は中世か らルネサンスへと時代が移ろうとするころの、北イタリアの都市ヴロナ。代々僧しみあう二つの名家、モンタギュー家とキャピュレット家には、それぞれ十代の息子ロミオ、娘ジュリ エットがあった。ロミオと親友マキューシオら、ジュリエットのいとこティボルトらはまたも街頭で衝突し、流血沙汰を起こす。

    両家の抗争に悩む大公は、「次に騒ぎを起こした者は、街から追放する」と宣言する。

    第二場 キャピュレット家の舞 踏会。ロミオは親友マキューシオらと変裝して乗り込み、ジュリエットと恋に落ちる。

    第三場 ジュリエットのバルコニー。

    その夜半、ロミオは人目を忍んでジュリエットのもとを訪れ、二人は愛の言葉を交わす。

    第二幕 第一場 街の市場。

    昨夜の思い出にふけりながら仲間 たちと戯れるロミオのところへ、ジュリエットの乳母が手紙を運んでくる。第二場 両家の和解を願う、ロレンツオ神父の僧房。二人は秘密の結婚式を挙げる。 第三場 再び街の市場。ティポルトの挑発に乗ったマキュー シオが、刺されて命を落とす。 それを見ていたロミオは激昂し、 彼を殺してしまう。

    第三幕 第一場 ジュリエットの寝室。追放処分になったロミオ はジュリエットと 夜をともに過ごし、夜明けに身を切られる思いで去ってゆく。残されたジュリエットは、婚約者パリスとの 結婚を急いで執りおこなうと両親に告げられ 途方に暮れてロレンツオのもとを訪れる。ロレンツオは彼女に死を装う秘薬を渡し、その間に呼び寄せたロミオとともに逃亡するよう勧める。

    ジュリエットはこれに従って仮死状態に陥る。

    第二場 キャピュレット家の墓所。訃報を聞いたロミオが、葬られたばかりの彼女のところへ 駆けつける彼女の死を信じたロミオは 母をあおり、その直後に目覚めたジュリエットは、絶望して後を追う。

    16世紀末に書かれた戯曲「ロミオとジュリエット」のバレエ化の試み自体は、じつは新しいものではなく、 十八世紀にはすでに先例がある。だが競うように新たな演出が 作られるようになつたのは、なんといつてもプロコフィエフの書いた音楽の魅力に負うところが大きい。若い恋人たちのためのリリカルな旋律と、まるでそれを押しつぶすかのような迫力に満ちた旧弊な貴族社会の曲の迫力は、それだけ聴いていても魂が揺さぶられるほどだし、 音楽自体が脚本といえるほどの緻密な構造を持つているのも、 振付家の挑戦意欲を搔き立てる因だろう

    おもな演出としては、まず、 作曲家に最初に新作を打診したキーロフ 現マリインスキ 劇場のこフヴロフスキ 版。マイムとダンスが途切れることなく続く写実的な描写、そしてヒロインを踊つたウラーノワの名演で、 1950年代にはヨーロッパの振付家にも大きな影響 を与えてゆく。その早い例であるクランコ版は、繊細な演劇性が魅力。次いで生まれたマクミラン版は、いかにもこの振付家 らしい迫真の死の描写に説得力があり、またジュリエットのイメージを、ウラノワ以来の深窓の令嬢的なイメージから、 情熱に駆られて疾走するヒロインへと劇的に変化させて、現在ではもつともポピュラーといえる演出。

    シーモア、フェリらの 名演を世に送り出してきた。その後の時代には、死神を象徴 的に登場させ、また華美な振付が特徴的なヌレエフ版、ス ピーディな展開と威圧的な男性の力が印象的なグリゴロー ヴィチ版など、ダンスの比重を 高めた演出が続く。さらに近いところではプレルジョカージュやマィョー、ドゥァトが手がけるなど、伝統的なバレエの美学 の外で活動する現代振付家に とつても、これが魅力的な素材 であることを示している。

    最初の出会いの好奇心と恥じらい から 中庭での二人きりの場面へ。ここでロミオが仮面をはずすと、 一気に親密な感情が高まる。そして第一幕の終わりの「パルコニ—の パ ド ド は、幾重にも死に塗りこめられたこの物語にあって、唯一 愛の喜びを清らかに歌い上げる、特別な場面。

    それだけに、振付家の腕のふるいどころである。 第二幕の「寝室の場面」は、いわば 死の気配がひたひたと押し寄せるなかでの、その変奏。そして第三 幕の「墓所の場面」では、仮死のジュリットにロミオが激しい嘆きをぶつけながら踊るマクミラン版に、壮絶な迫力がある。

    命を落とすのは彼らだけではない。マキュ—シオの長い断末魔やティボルトの死を嘆くキャピュ レット夫人の慟哭もまた、このバレエの紋章なのである。

     

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